後輩の大学院生や大学院進学希望者に「この本は、大学院と関わるうえで読んでおいたほうがいいよ!という本はありますか?」とたまに質問を受けます。
そこで本記事では、大学院生や大学院進学希望者が読んでおきたいおすすめの大学院や研究に関する本をご紹介します。
大学では教えてもらえない大学のこと、研究者としての心得、論文や査読をめぐるあれこれなど特化型の良書が多数あるので、ぜひ読んでみてください。
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大学院進学前に読みたい本1|大学とは何か
東京大学教授の吉見俊哉さんによる本書は、大学を知のメディアとして捉え、大学を知のメディアとして捉え、中世ヨーロッパにおける誕生から、近代国家による再生、明治日本への移植と戦後の再編という歴史のなかで大学の役割や理念の再定義を試みる意欲的な1冊。
大学院生になると、学部生以上に大学や学問的な知をめぐる社会的な環境やまなざしに敏感にならざるをえなくなります。大学とはそもそも何か?という根本的な問いを理解したうえで大学院生活を送ることで、大学の違った側面がみえてくると思うのでおすすめです。
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大学院進学前に読みたい本2|大学は何処へ 未来への設計
ロングセラーとなった1冊目の『大学とは何か』の姉妹編ともいえる本書。大学は存続の危機にあるといわれることがある今日、その根本原因がどこにあるのかを探る本書では、「時間」をキーワードに大学再生のための戦略が示されています。
コロナ禍の2021年4月に出版されたので、最新の大学をめぐる動向が描かれています。大学院進学者の中には、将来的に大学でポストを得たいと考えている人も多くいると思うので、そんな人はぜひ読んでみてください
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大学院進学前に読みたい本3|科学者の社会的責任
科学者であり研究者でもある多くの大学院生にとって、「科学者は社会に対してどのような責任を負うべきなのか?」「どのような形で責任を負うことができるのか?」という問いは重要なものです。これは学部生とは異なる部分でしょう。
本書では、日本における過去の責任論や事例を検討し、EUの巨大研究プログラムにおける新たな取組み(RRI)を参考に、今後の「責任ある研究」のあり方が示されています。
大学院進学前に読みたい本4|専門知と公共性―科学技術社会論の構築へ向けて
『科学者の社会的責任』と同じ、東京大学教授の藤垣裕子さんの著書。異分野間摩擦のしくみを分析、それを越えて、現代社会の直面する諸問題に対応するため専門家・市民・行政の三者をつないで公共空間を担保する具体的な仕組みを示す本書。科学技術社会論(STS)といわれる研究分野の基本書です。
本書を読むことで学べるのは「市民と科学者の間のコミュニケーションギャップをどのように乗り越えられるのか」です。研究のアウトリーチや社会への還元が重要性を増す今日、研究者にとって必要な視点を授けてくれる1冊です。
大学院進学前に読みたい本5|搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学
政府が推進する政策である「産学連携」または「産学共同研究」。一見、順調に見えますが、残念ながら様々な課題があるといわれています。
特に企業側はともかく、大学側や研究者にとって、その労力に見合う効果が生まれたとは言い難い部分も。本書では、研究者と弁護士の二足の草鞋を履く著者が、実際に解決に奔走した事件をベースにその実態を紹介しています。
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大学院進学前に読みたい本6|在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活
「在野研究者」とは、大学に属さない、民間の研究者のことです。筆者自身も在野研究者ということで、現役で活躍するさまざまな在野研究者たちによる研究方法・生活を紹介している、実践的実例集です。
大学院に進学すると「大学院でしか研究はできない!」と思いがちですが、もちろんそんなことはありません。卒業後も退職後も退学後も、いつだって学問はできます。本書を読むことで大学院という場所を相対化し客観的にいまの恵まれた環境や、研究することの意味を考えることができます。
大学院進学前に読みたい本7|これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得
『在野研究ビギナーズ』と同じ荒木優太さんによる1冊。これまで、大学ではない在野で研究し成功してきた16人の在野研究者の「生」を、彼らの遺した文献や、伝記的事実から読み解く本書。
「研究者として生きるとはどういうことか」を教えてくれる本書は、個人的にとても好きな本です。大学という場に所属していない研究者たちの人生は、逆に大学院に所属する人びとに大きな何かを突きつけています。
大学院進学前に読みたい本8|文系大学院をめぐるトリレンマ
なぜ、文系修士課程修了者は労働市場で評価されにくいのでしょうか?本書では、その問題は「大学院教員」「雇用者」「大学院生」の3者間に存在する齟齬にあると仮定したうえで、アンケートやインタビュー調査からその構造を解き明かしています。
国内の動向だけではなく、米国や中国での近年の動向もあわせて紹介されており、分家大学院をめぐる多様な視点を知ることができます。
大学院進学前に読みたい本9|博論日記
フランスでベストセラーとなった博士研究者の入学から修了までを描いた1冊。英米、ドイツ、イタリア、スペイン、アラビア語圏、中国など各国で翻訳出版された話題の本の日本版が、2020年についに出ました。
主人公の女性はカフカの研究をしていますが、そんな彼女に対して家族や彼氏から投げかけられる言葉、教授とのやり取り、生きていくためのアルバイトなどそのすべてがとてもリアルで「笑って泣ける」と評判の大学院生日常系漫画です。
大学院進学前に読みたい本10|文系 大学院生サバイバル
文科省の推進した「大学院重点化」により、日本の学術レベルは飛躍的に向上したといわれていますが、本当にそうでしょうか? 大学院の乱立により、むしろ多くの若者が人生を狂わせていると筆者は指摘します。
本書は、大学院生が直面せざるを得ない危機を回避し、学問とともに歩むための「道しるべ」的1冊。「道しるべ」といっても、大学院という小さなムラ社会での「当たり前」のことを書いているにすぎないと筆者は言いますが、こうした「当たり前」のことは大学院生には見えにくく理想と現実のギャップに引き裂かれてしまう人も多くいます。
その激しい文章には賛否両論ありますが、文系で大学院進学を考える人は読んでおいて損が無い1冊だと思います。
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大学院進学前に読みたい本11|働きながらでも博士号はとれる
社会人として働きながら大学院に通い、効率的かつ最短で、博士号を取得するためのノウハウが詰まった1冊。大学院進学準備から研究テーマの設定、査読付き論文の投稿、論文採択のための必須ポイント、最終審査のプレゼン攻略法などについて具体的にアドバイスが載っています。
社会人学生として博士号をとった著者自身の経験をもとに書かれているのが信頼できるポイント。仕事と大学院生活を両立させるためには戦略が必要です。社会人大学院生はぜひとも読んでおきたい1冊だと言えるでしょう。
大学院進学前に読みたい本12|新版 論文の教室 レポートから卒論
長年読まれ続ける論文の書き方の名著が『論文の書き方』であるならば、本書は21世紀を代表する論文の書き方解説本になる可能性のある1冊です。
「作文ヘタ夫」くんが最初の草稿を書き直し、論文として仕上げるまでのストーリーを通して、論文執筆のポイントを紹介した本で、先行研究を踏まえながら、その問題点や派生する課題を見つけ、自分のテーマとして論じる方法が示されています。
【あわせて読みたい】論文を書く前に読みたいおすすめ本14選-文系理系別有/書き方やコツがわかる-
大学院進学前に読みたい本13|人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く
文系では全国で初めて大学院生に特化したキャリア支援を手がけた一橋大学。本書ではそのスタッフが、これまでの蓄積をもとに“研究と就職”のためのポイントを具体的・実践的に提供。研究職志望者・企業等への就職志望者の双方に対応し、ポストドクター・外国人留学生・大学教職員にも役立つ必携のテキスト。
院生のキャリア支援に携わる一橋大学の講師が、これまでの蓄積をもとに<研究と就職>のためのノウハウを具体的・実践的に提供。研究職志望者・企業就職志望者の双方に対応し、ポスドク・留学生・支援者も使える有用なテキスト。
大学院進学前に読みたい本14|「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する
今日、「役に立つ学問」という幻想と「純粋な学問」という神話がアカデミアには強く存在します。その弊害が広く議論されていますが、本書はこれらの幻想と神話の構造をわかりやすく解説しています。
大学改革における論点を整理し、改革を推進する側と批判する側の根拠や正当性を再考しており、「大学とは何か・今後どうあるべきか」を考えるために知っておくべき手がかりが載っています。
大学院進学前に読みたい本15|アカデミアを離れてみたら――博士、道なき道をゆく
博士号を取得したのち、アカデミアに残らない選択をする人は多くいます。では彼らは、一体なぜその選択をしたのでしょうか、またその後はどんな人生を送り何を感じて生きているのでしょうか、また研究の経験はその後どのように活かされているのでしょうか。
企業の研究職から官僚そして指揮者まで、主に理系の博士号取得者たちが、酸いも甘いもひっくるめて語りつくす本書。21人の登場者の人生は「外」の世界をいきいきと映し出し、そしてアカデミアのいまを見つめる機会をくれます。
大学院進学前に読みたい本16|大学教授が、「研究だけ」していると思ったら、大間違いだ!
教授の仕事は、“研究”と“講義”だけではありません。高校生や予備校生、さらには市民への“広報活動”の仕事。法人組織の一員として担当する“管理運営”の仕事。そして、研究に付随する、科研費の確保や産学連携、学生への生活指導や文章添削の仕事などなど…
教授はただの研究者ではなく、“勤め人”であり、“教育者”です。大学院生側からは見えない教授職の裏側がみえる本書は、将来アカデミアで仕事がしたい人におすすめです。
大学院進学前に読みたい本17|科学を育む 査読の技法〜+リアルな例文765
大学院生になると書くことになる論文。修士論文や博士論文など学位取得のために各論文のほかに、ジャーナルや学会誌に投稿する論文があります。これらには、査読付き論文というものがあり、分野の近い他の研究者が、自分の論文を審査して質に問題が無ければ掲載が決まるというものです。
そんな査読をめぐっては「また、落ちた…」「頑張って書いたのに、落ちたなんで…」ということがしばしば。この本では、そんな裏側が見えにくい査読の仕組みや、もし査読者側にまわったときの方法など査読をめぐるあれこれがわかりやすく解説されています。
大学院進学前に読みたい本18|学振申請書の書き方とコツ 改訂第2版 DC/PD獲得を目指す若者へ
大学院生になると申請できるのが、学振です。採用されると、月に20万円もらえるので生活がとても楽になり研究に集中できるため、必ず応募したいところ。しかし、応募のフォーマットは年々変わっており、論文などとは異なる執筆テクニックも必要なため採用は難関となります。
この本は、そんな学振について0から解説した本です。評価もとても高く、筆者も学振に応募する際に購入して応募しました。具体例が豊富に載っており、採用者のコメントや過去の申請書例も載っているので、学振に応募するなら必読といえるでしょう。
大学院進学前に読みたい本19|とある理系の大学院
とある理系大学院の化学系研究室を舞台に大学院生たちが繰り広げるコミカル漫画。理系分野に秀でた主人公を中心に、色恋沙汰、鈍感な同級生の鈍島たちとの関わりなどを描いています。
個人的におすすめなのが、くすっと笑える研究室生活のあるある!大学院に入ってから読むと「あるある」という感じで、大学院進学前に読んで大学院に入ったら「こんな感じのやり取り、あの漫画であったな」と思うシーンがたくさんです。
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本記事では、大学院生と大学院進学希望者が読んでおきたい本をご紹介してきました。このほかにも、大学院での就職活動や教養を身につけるための本を以下の記事で紹介しています。興味関心のある方は、ぜひあわせて読んでみてください!