【10分でわかる】査読とは何か?その意味や期間、方法、やり方についてわかりやすく解説

査読とは

修士課程、博士課程になると「査読付き論文を書きましょう」「査読無しのところに出すなら、査読付きに出したほうがいいよ」といった言葉を聞くようになります。

しかし、この「査読」という言葉、日常生活では使わないばかりか学部時代にもその意味を学ぶことは無いため、いまいちわからないまま聞いているという方も多いのではないでしょうか?

査読とは、「研究者が学会に論文を投稿する際に、あらかじめ同じ分野で仕事をしている他の研究者による評価を受けること[伊藤, 2006]」です。つまり論文の質や学会の質を保証するためにある仕組みだといえるでしょう。

査読については、意味以外にも以下のような疑問がよく聞かれます。

  • 査読付き論文ってなに?
  • 査読がなぜ重要なの?
  • リジェクトってなに?
  • 査読はどのような方法でなされるの?
  • 査読はどのくらいの期間かかるの?

査読の方法や期間については一概に答えは出せませんが、この記事では査読を巡るさまざまな疑問についてわかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

査読とは?その意味や定義

査読とは「研究者が学会に論文を投稿する際に、あらかじめ同じ分野で仕事をしている他の研究者による評価を受けること[伊藤, 2006]」です。

学会と呼ばれる研究者の集まる会が発行する「学会誌」や、大学などが発行する「紀要」において査読が行われることが多いです。

査読付き論文とは

査読を通過した信頼性の高い論文を査読付き論文といいます。査読制度を設けていない雑誌の論文よりも、査読付き論文の方が社会的学術的な客観的評価は高くなる傾向にあります。

また、研究者の実績は査読付き論文の発表数で判断されることが多く、学位審査などにも影響します。例えば筆者が所属する大学の博士課程では、課程在籍中に2本~3本の査読付き論文を書くことが暗黙の了解となっています。

なぜ査読が重要なの?査読の役割とは

査読には、いくつかの重要な役割があります。

  1. 査読による教育効果で、その分野の若手や研究の水準を高める
  2. 学会全体、分野全体の議論を活性化させるような論文を生み出すため
  3. 学会やその分野の社会的学術的な信用のため

のちほど触れますが、査読をする際には査読者という論文を評価する役割の人がいます。この人たちは投稿者と同じ研究者であり、高い専門性を有する人です。査読者が1人ないしは複数人で論文を確認することで、1~3のような効果が発揮されます。

査読結果の種類 リジェクトや条件付採録とは?英語の査読結果の表記は?

査読付き論文は、投降後に査読の結果が投稿者にフィードバックされます。よく聞く「論文がリジェクトされた~」というのは、査読で落とされたという意味です。ここでは伊藤氏による4つの査読結果の種別をもとに、査読結果についてみていきます[伊藤, 2006]。

1つ目は「採録」です。これは、特に修正など無く発表・掲載しましょうという判定です。(英語ではアクセプトという)

2つ目は「条件付採録」です。これは、再提出時に、査読者が示した条件を満たすように書きまなおしてあれば、次回採録しますという判定です。(英語では若干の修正が必要なものをマイナーリビジョンという)

3つ目は「再判定」です。これは、再提出時に、査読者の意見を全て考慮して書き直してあれば、再検討しましょう(もう一度査読しましょう)という判定です。(英語では、大幅な修正が必要なものをメジャーリビジョンという)

4つ目は「不採録」です。これは、発表・掲載できませんという判定です。不採録となった理由は教えてもらえます。(英語ではリジェクトという)

以上のように査読結果はわかれています。もしあなたが投稿して2つ目3つ目の結果が返ってきた場合には、修正して再提出するもよし、投稿自体を取り下げるのもよしです。

学会によっては「ここの学会は査読がしっかりしているから、査読のコメントだけもらって別の学会誌に投稿しよう」という会員が多い学会誌もあったりします。

また、結果が不採録となった場合には、その学会誌にそのままの内容で今後、投稿することはほぼ不可能です。別の投稿先を見つけて修正したものを投稿するのが賢明な判断だといえるでしょう。

査読の方法とやり方・期間 (とある年3回発行の学会誌の場合)

ここでは査読の方法・やり方について、とある年3回発行の学会誌のケースを紹介します。まず前提として、年3回しっかりとで続けているこの学会誌は、非常に質が高くペースも早い部類に入ります。

年1、2回発行の学会誌の場合は投稿してから掲載されるまで半年~1年かかるものがざらにあります。また海外のJournalに投稿する場合は、1年~3年程度かかることもあります。このように学会誌によってその期間はバラバラな中、今回紹介するものは非常にペースが速いほうです。

  • 投稿締切日
  • 出版社との打ち合わせ(1週間~2週間)
  • 編集委員を選ぶ(1週間~2週間)
  • 担当の編集委員に、編集委員になったことを伝える(数日)
  • 査読の担当者が決定する(1週間程度)
  • 査読担当者が決定したことが、委員内で共有される(数日)
  • 論文内で個人が特定できる箇所を隠す作業(マスキング)と査読依頼(1週間~2週間)
  • 査読開始(数週間)
  • 採用~不採用が確定
  • 修正後掲載、修正後再査読などのプロセスが行われ、修正原稿が提出される
  • 編集因果修正の確認や最終決定をする
  • 論文採用
  • デザイン確定
  • 印刷
  • 発行

期間が曖昧な部分もありますが、査読にはこれほど多くの過程が存在します。「査読はなんでこんなに遅いんだ!」と思われる方も多いと思いますが、この過程をみるとどうして時間がかかるのか分かるのではないでしょうか。

ただ学会ごとに査読期間や方法へのスタンスが異なるのが実態です。「できる限り早く進めよう!」と担当者が考え頑張っているところもあれば、「まぁ、ゆったりやればいいか」という考えで遅くなっているところもあります。

もしあなたが査読付き論文に投稿したいと思った場合には、その論文が定期的に遅れることなく十分な質で発行され続けているか確認することをおすすめします。

査読付き論文の探し方

査読付き論文を探す方法はいろいろとあります。例えば、J-STAGEやCiNiiの場合は、検索時に査読付の項目にチェックを入れることで査読付き論文のみを検索することができます。

また研究者情報サイトResearchmapでは、論文やMISCに掲載されている論文タイトルの近くに水色に白抜きで査読の文字があります。

これらのサイト以外にも、論文を検索する方法はあります。論文検索の方法についてより詳細に知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

先行研究・参考文献の探し方-現役大学院生がおすすめする7つの方法-

査読に関するQ&A

ここまでで取り上げられなかった、査読に関するQ&Aをいくつかまとめてみました。学会誌によって違いがあることは前提としたうえで、参考にしてください。

Q
査読付き論文の採択率はどの程度ですか?
A

学会誌によってさまざまです。私が入っている学会では、採択率が7割程度のものもあれば、2割程度のものもあります。この点に関しては公開している学会は少ないので先輩研究者などに相談してから投稿先を決めることをおすすめめします。

よくある手法としては、採択率が低いけど権威性の高い学会1つと、採択率が比較的高い学会1つの二段構えにして、前者で落ちたら後者に投稿するというものがあります。

Q
修士論文や博士論文でまとめた内容を、査読付き論文として出すのはありですか?
A

以前は、修論や博論をまとめた論文は推奨される傾向にありました。しかし近年は博論などがネット上でも公開されるようになったため、同じような原稿が別の論文として公開されるという状態になっています。

こうなると二重投稿や自己剽窃にあたる可能性も高まるため、今後は以前ほどは推奨されなくなっていくかもしれません。この点も、学会誌を発行する学会がどのようなスタンスかによると思います。

自己剽窃や二重投稿、盗用などについてより深く知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
剽窃とは何か?論文で盗用やコピペは絶対NG!定義や避ける方法を解説

Q
査読について深く学べる本はありますか?
A

最近発行されたモノから古いものまで、数は少ないですがあります。以下3冊は比較的評価も高く汎用性もあるのでおすすめです。ぜひ買って読んで参考にしてみてください。

最後に-査読付き論文の数至上主義のような風潮になっているが…-

査読とは

今回は査読とは何かを解説してきました。現在、日本の研究者を取り巻く環境はどんどん厳しくなっています。このような状況において査読付き論文の数で若手研究者が競わざるを得ない状況になりつつあります。

しかし最後にこれだけは伝えたいのは、査読を行うのは人間です。そこには主観が入ることもありますし、ミスすることもあります。査読付き論文という業績だけにこだわっているとその理不尽さや遅さにイライラし精神的にも不調になるかもしれません。

査読付き論文は重要なのは前提としたうえで、それ以外に自分の研究を評価してもらえたり発信できるような場を作っていくことも、これからの研究者では重要なのかなと感じています。

参考資料
伊藤貴之, 2006, 「査読の仕組みと論文投稿上の対策」

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最後に効率よく学ぶために本を電子版で読むのもオススメです。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

管理人

某国立大学大学院博士後期課程所属. 社会科学分野での地域研究が専門. 卒業論文では地域とメディアについて取り上げ、修士論文では地方自治体で暮らす人々の人間関係を取りあげました。大学院で研究して論文を書いたり、各種媒体に寄稿したりしています。