卒業論文の書き方完全ガイド販売開始!シリーズ1冊目は『卒論を書く前に知っておきたい6つのこと』
論文やレポートを書く際に、こっそりと他人の文章をコピペすることを「剽窃(ひょうせつ)」といいます。有名大学の教授が過去の剽窃がバレて職を解かれたニュースなど聞いたことあるんじゃないでしょうか。
しかし初めて論文やレポートを書く人は、こんな風な疑問が浮かんでくると思います。実際に過去の私もそうでした。
- 一体どこからが剽窃や盗用になるの?
- 剽窃や盗用をしないようにするには、どうすればいいの?
- なぜ剽窃や盗用はしてはいけないの?
この記事では、あなたが剽窃や盗用で単位を落としたり卒業できなくならないための注意点をゼロからわかりやすく解説していきます。剽窃や盗用をしてはいけないというルールは、論文に限らず社会人生活でも当たり前のことなので、ぜひこの機会に学んでいきましょう。
剽窃(盗用)とは?定義を解説
剽窃とは、既存のデータや語句、文章、考え方などを、その著作者名を示さずに勝手に使ったり提示したりする行為全てを指します[野村, 2017]。
もっとわかりやすい言葉でいうと、他人が書いた文章やデータを「自分が考えて書いたもの」かのように使うことです。これは強盗や万引きと同じ盗みであるため、盗用とも呼ばれます。
剽窃を防ぐために重要なのは参考文献/引用文献を漏れなく書くことです。ややこしい参考文献の書き方についてはこちらの記事で解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。
卒論 参考文献の書き方をわかりやすく解説!文字数・書き忘れない方法など
何をしたら剽窃になるの?
剽窃にあたるケースはさまざまです。以下に、その例を示したので一つずつ確認していきましょう。
- 他人が書いた文章をそのまま引用しているのに、出典情報を書いていなかったり引用符「など」で他人が書いた文章であることをがわかるようにしていない。
- 他人が実験して得たデータを、あたかも自分のデータかのように勝手に使う
- 他人の文章からアイデアを得て一部書き換えた文章なのに、出典情報が書いていない
- 他人のアイデアなのに、出典情報が書いていない
1は、他人が書いた本や論文の文章を、そのまま一言一句違わない形で使っている=引用しているのに、そのことがわかるようにしていないケースです。引用した場合には、そのことがわかるように出典情報や引用符「」、文頭を一段下げるなどしなければなりません。
2は他人が実験や調査をして得たデータなのに、そのことを書かずに自分が実験や調査をして得たデータかのように示しているケースです。
3は他の人が書いた論文や本の文章をもとに、少し書き換えたり言い回しを変えたりしているのに出典情報を書いていないケースです。これが一番やりがちなことかもしれませんが、意図の有無にかかわらずアウトです。
4は学会やその他の場所で研究者同士で話をしていて聞いたアイデアを、勝手に自分のものとして使うことです。文章だけでなくアイデアや考えた方も剽窃になることがあるので注意しましょう。
剽窃は絶対にバレると思ったほうがいい3つの理由
剽窃がいけないことだと知りつつも、「まぁ、このくらいなら大丈夫か」「多分、バレないだろう!」と思っている人は多いかもしれません。しかし私の経験上、剽窃はほぼ確実にバレると思ったほうがいいです。その理由は以下の3つです。
一つ目の理由は、剽窃チェック機能が進んでいるためです。昔であればバレなかった剽窃も今日では各大学に導入される剽窃チェックのためのソフトなどで簡単にバレてしまいます。知り合いの教授も「学生のレポートで盗用を見つけちゃった…」と言っていたことがあります。特にコピペしたものなどは一瞬で分かるので注意しましょう。
二つ目の理由は、剽窃した文章は明らかに語句や文法が違うためです。特にこれは学部生のレポートで起こりがちですが、レポート内の他の文章や過去にあなたが書いた文章とは違うため剽窃がバレます。
三つ目の理由は、特に論文を学会誌に投稿する場合に起きますが、剽窃された本人が文章を読むケースがあるためです。同じ分野の研究者であれば、あなたが書いたものを読む可能性はとても高いです。本人であれば多少言い回しを変えていても剽窃したことはわかるでしょう。
もしも剽窃をしたらどうなるの?
剽窃は絶対にやってはいけないことです。では、もし剽窃をしたらどうなってしまうのでしょうか?ここでは3つのニュースから剽窃してしまった人の処分をみていきましょう(下記の記事はそれぞれの記事を参照しています。詳しく知りたい方はニュースページをご覧ください)。
【あわせて読みたい】卒論が提出できず留年!?コピペがバレて卒業できない!?噂を検証(対応策もあり)
知り合いが盗用-有名教授にパクリ疑惑発覚-
2021年、 「学生ローン」とも揶揄される奨学金制度の問題を長年取材しているフリージャーナリスト三宅勝久氏が、自著を大量に盗用された疑いがあるとして、中京大学国際教養学部の大内裕和教授が所属する中京大学に対して研究不正の告発をしました。
三宅氏と大内氏は同じ本の中で文章を書くくらい距離も近い関係性だったとのこと。どれだけ仲がよくても研究不正はNGです。あなたがもし知り合いの論文や本から剽窃をしたら、研究者としてアウトなだけでなく友達も減り人として信用されなくなるでしょう。
参考記事:まさかあなたが――「弱者の味方」有名教授 にパクリ疑惑発覚
京都大学が初の博士号取り消し
京都大学は、2021年5月25日、人間・環境学研究科の元大学院生に対して2012年9月に授与した博士号を取り消したと発表しました。京都大学が博士号を取り消すのは初めてのこと。
京都大学によれば、元院生が紀要に掲載した論文に盗用の疑いがあると通報がありました。大学が調査したところ、計11カ所で出典を明記しない無断引用や着眼点の無断借用などを確認。博士論文でも、紀要に載った論文が転用されていることを確認したため盗用と認定したとのことです。
博士号とは、学部を出て修士号を取って研究を続けた先で初めてとれるものであり、専門家を証明するものです。これが取り消されるということは、仕事を首になる可能性もありますし、社会的な信用も落ちる可能性があります。
このニュースからわかるのは①約10年前の剽窃でもNG、②文章ではなく着眼点=アイデアの無断借用もNG、③11箇所の出典不明記でNGということです。「たったそれだけ…」と思う人もいるかもしれませんが、そのくらい剽窃は悪いことなのです。なぜならそれは「盗み」だからです。
東京理科大学元教授、論文を盗用・改ざん 昨年3月に退職
東京理科大学の教授が、他人の論文を盗用・改善していたため、2019年3月に退職したことがわかった。元教授は、他の研究者の論文を無断で流用して論文を作成し発表。その際に、流用元の論文にある研究データを一部改ざんしたといいいます。
元教授は関連する論文をもう1本発表していますが、こちらは内容が本質的に同じで引用表示もされていないため、二重投稿(同じ内容のものを別の場所で発表すること)にあたります。
大学教授であっても剽窃をしてバレたら一発アウトということがこのニュースからわかります。偉さや地位に関わらず剽窃は絶対NGなのです。
たまたまや気づいていなかったでは済まされない!剽窃しないための注意事項
ここまで剽窃や盗用をしてはいけない理由を解説してきました。ここまで読んで「じゃあ一体、どうすればいいの!?」と思った方もいるはず。最後に、剽窃しないために押さえるべきポイントをチェックリストにしました。論文やレポートを書き終えたら、ぜひこのチェックリストに沿ってミスがないか確認してみてください。
- 他の人の表現を使った場所には、全て出典情報を書いてあるか
- 参考文献/引用文献リストに出典情報が全て書いてあるか
- 過去の自分の文章も出典情報が書いてあるか
- 他人の許可を得て引用した箇所は、許可を得たことがわかるように書いてあるか
- ネット上の文章をそのままコピペしていないか(Wikipediaなど)
剽窃や盗用についてより詳しく解説している本もあります。もしこの記事を読んでまだ心配、もっと知りたいという方はぜひ下の本を買って読んで勉強してみてください。
論文やレポートの書き方を解説した本は他にもあります。ぜひこちらの記事もあわせて読んでみてください。
卒論/卒業論文を書く前に読みたいおすすめ本14選-文系理系別有/書き方やコツがわかる-
最後に-剽窃(盗用)は絶対ダメ!-
記事内でも何度も書いてきましたが、剽窃(盗用)はあなたの人生を大きく変えてしまう可能性がある行為です。
剽窃で単位を落として卒業できず、やむなく退学ということもあります。
過去の剽窃がバレて卒業資格や修士号、博士号が剥奪されることもあります。
過去の剽窃がバレて積み上げてきたキャリアが壊れることもあります。
剽窃によって人間関係が壊れることもあります。
自戒も込めて、くれぐれも剽窃(盗用)には気を付けましょう。剽窃、ダメ絶対!
卒業論文の書き方完全ガイド販売開始!シリーズ1冊目は『卒論を書く前に知っておきたい6つのこと』
参考文献
野村康 (2017)『社会科学の考え方—認識論、リサーチ・デザイン、手法』名古屋大学出版会, pp. 288-329