大学に入り、さまざまな授業で課題として出るのが「レポート」です。高校生までも小論文やエッセイの課題はありましたが、大学で求められるレポートは高校までのものよりレベルアップします。
ただ心配する必要はありません。はじめに基本を押さえれば平均的なレポート以上のものは書けるようになります。裏を返せば、レポート課題で単位を落としたり評価が低くなる人は、そもそもレポートの基礎を押さえられていないのです。
実は、それは無理のないことです。なぜなら高校~大学の間に「レポートの書き方」をしっかりと学んだことのある人が、一体どのくらいいでしょうか?多くの人がレポートの書き方を学んだことが無いのに、大学に入ると急に「レポートを書きなさい!」と言われ苦戦してしまうのです。
この記事ではレポートの書き方完全ガイドと題し、現役の国立大学博士課程の大学院生がレポートの書き方を基礎からわかりやすく解説していきます。
他サイトと比較した際の特徴として、この記事ではとにかく網羅的にレポートの書き方を解説することを目指しています。またこの1記事で、できる限り多くのポイントをわかりやすく解説することを目指しています。
より詳しくレポートの書き方を知りたい場合は、各項目で示している関連記事や、本Webサイトに掲載しているレポートの進化版 卒業論文の書き方に関する各種記事を参照してみてください。
下記の記事では、レポートの基礎となる文章力を高めるためにおすすめの記事を紹介しています。ぜひあわせて読んでみてください。
※レポートが苦手な人・初めて書く人は、以下の記事もあわせて読んでみてください。
【2024年最新版】レポートが苦手な人・初めて書く人におすすめの本まとめ
レポートとは何か?ー同じ言葉でも高校、大学、会社で用法に違いがあるー
立教大学図書館の解説によれば、レポートとは「問題を提起し、その問題に対して自分の考えを客観的かつ論理的に説明した学術的な文章」を指します。
提起した問題に取り組むためには、文献調査で先行事例や先行研究を調べたり、フィールドでの調査や実験を行ってデータを集め分析考察をする必要があります。そのためレポートでは、調査で得られた事実と根拠を示し、自分の考えを「形式」に則って書いていきます。自分が妄想/想像したことのみを書くのはNGです。
同じ「レポート」という言葉を使っていても、高校、大学、会社でその用法が微妙に異なることも注意する必要があります。高校ではレポートというと、主に「感想文」「考えを書く」ものが多いように思います。
大学ではただの感想文ではいけません。論理的な構成と学術的な文章であることが求められます。また会社では、レポートというと主に「報告書」を指します。「報告書」は論理的な構成である必要がありますが、必ずしも学術的な手続きを踏む必要はなく、この点が違いだといえるでしょう。
「レポートとは何か?」この点について、より詳細に知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
レポートとは何か?簡単にわかりやすく解説-中学・高校・大学・会社で異なる意味とは-
レポートを提出するまでの流れ
今まで学術的なレポートを書いたことが無い人にとって、最もわからないのが「提出するまでの流れ」です。ここでは大きく4段階に分けてレポート提出までの流れを解説します。
① レポートのテーマを設定する
はじめにレポートのテーマを設定します。課題によっては明確にテーマが指定されることもありますが、高校と大学の違いは「大学ではテーマが学生に委ねられる」ケースが多いこと。課題を理解したうえで、適切なテーマを決定し、執筆前に簡単な構成と論理の組み立てを考えます。
② 調査
レポートの執筆に必要な情報を集めるための調査を行います。先行研究を知りたい場合は文献調査を、生の声を聞きたい場合はインタビュー調査を、事例を知りたい場合はフィールド調査を、理系の場合は実験もここに当てはまります。こうして収集したデータは、レポート執筆前に整理分析しましょう。
③ レポートの執筆
ここまできてやっとレポートの執筆です。集めた情報を踏まえて改めて論理構成やテーマを精査し、まずはアウトライン(全体の大まかな流れ)を考えます。書き終えたらレポートの本文を書いていきましょう。書き終えたら時間を終えて見直すのを忘れずに!
④ 形式を整えて提出
レポートが学術的な文章であるため、形式も決められたように整える必要があります。文頭は一マス空いているか、引用は明記してあるか、参考文献リストに漏れはないか、画像内の文字は見えるかなどの体裁を整えます。完成したら、期日までに忘れずに提出して完了です。
レポートの種類
一口にレポートといっても、実は様々な種類があります。ここでは一部ですが、レポートの種類を紹介します。ここでは主に論述型と報告型にわけてまとめましたが、別の分け方として「自由記述型」「論考型(アカデミックエッセー型)」「試験・実験型」という種類の区分けもあります。
レポートの種類ごとに指定されていることは異なります。しかし、学部生のレポートを読んでいるとレポートの指示内容を守っていないレポートがたまにあります。例えば「指定された資料を読んでまとめよ」と書いてあるのに、自分の感想や意見ばかりが書かれていてまとめていないものなどです。その場合は最悪、単位を落とす可能性もあるので、指示はしっかりと守ったうえでレポートを書きましょう。
決まったテーマと問題を論じる論述型 | 地域社会におけるコミュニティの衰退の原因と対策について、あなたの考えを3,000文字以上で展開しなさい。 |
問題を自分で設定して論じる論述型 | ジェントリフィケーションについて自由に論じなさい。 |
指定された資料を読んでまとめる報告型 | ○○という本を要約し、論点を3つ以上示しなさい |
資料を探して読む報告型 | 「大きな物語の終焉」この言葉の意味と関連する出来事を調べて報告しなさい。 |
レポートの構成例を紹介
レポートを作成するうえで最も悩ましいのが構成です。しかし実は、レポートの大まかな構成は決まっています。下記に示す構成通りに書いていけば失敗することはありません。逆に、もしレポートの構成が以下のようになっていない場合、それは論理的な文章になっていない可能性があります。自分のレポートが以下のようになっているか、しっかり確認してみてください。
① 表紙/タイトル|レポートの構成
レポートによって表紙の有無は異なります。表紙が必要な場合には、提出日・担当者名・科目名・レポートの題名・学年と学部・学科・学籍番号・学生氏名などを表紙の用紙に書きましょう。
表紙の有無にかかわらず、タイトルは必須です。レポートの内容を簡潔に示すことができるタイトルを選びましょう。なおタイトルは①長すぎないこと ②抽象的すぎないことが重要です。以下の記事では卒業論文を例にタイトルの決め方について解説しています。タイトルで悩んでいる方は、参考にしてみてください。
卒業論文のタイトルの決め方・付け方-良い例悪い例をみながらわかりやすく解説-
② 序論|レポートの構成
序論とはレポートの書き出し部分のことです。これか何をテーマに、何をどのような方法で考察するのか、考察した先にどのような問いを明らかにしたいのかを示します。特に定められた文量はありませんが、レポート全体の20%前後に収まるようにしましょう。また、序論では以下の内容を盛り込むことが重要です。
- テーマ:レポートで何について考察するのか
- レポートの背景と先行研究の問題点:レポートで扱う内容の事前知識、主題に関する論点・問題点
- 動機:なぜその主題を選んだか、なぜそれを主題にしたのか
- 目的:その主題について考察することでどのような結果と効果が得られるのか
③ 本論|レポートの構成
本論はレポートのメインパートです。調査内容、先行研究などを踏まえ、自身が論理的に考察した内容を書きましょう。本論はレポートの要なので、前他の60%~80%程度書きましょう。また本論では、以下のポイントを押さえるようにしましょう。
- 調査資料:比較等をして、ある事象を説明する根拠として用いる
- 先行研究:何かを説明したり文献の記述を批判的に検討したりする
- 考察:調査資料や先行研究をもとに自身が主張したい内容を書く
④ 結論|レポートの構成
結論はレポートのまとめです。レポート内で何が明らかになったのか、目的は達成できたのか、残された課題は何なのかなどを書きます。結論は簡潔に書く場合が多く、レポート全体の10%前後におさめることを意識しましょう。なお結論では、以下の要素について書くことが重要です。
- まとめ:本論で得られた結果とそれに対する考察
- 課題:レポートでは明らかにできなかったことや、今後の課題
- 展望:このレポートで得られた結果がどのように役立つのか
- (必要に応じて、調査協力者への謝辞も加えましょう)
⑤ 参考文献リスト|レポートの構成
参考文献リストは、レポート内で引用した資料をリストアップする部分です。もしレポート内で引用したのに、参考文献から漏れていた場合、最悪のケースでは「剽窃」となり単位を落としたりペナルティを食らう可能性があります。必ず、全ての引用文献が載っているか、書き方はのちほど示す決まりに従っているかを確認しましょう。
レポートの文字数に決まりはあるか
レポートの文字数は、課題ごとに異なります。普遍的に「何文字以上書けばOK」という文字数の決まりはありません。
たまにある質問として「内容がよければ、文字数が少なくても良いか」というものがあります。これは出題者によって考え方は異なりますが、私は決められた文字数を超えていなければ、どれだけ内容がよくてもNGだと思います。
レポートは内容の素晴らしさとあわせて、卒業論文などに向けてある程度の文章量を書く練習でもあります。仮に課題のレポートで5,000文字以上書きなさいと指定されているのに、2,500文字しか書いていない場合、この人は「文章力が無い」「定められた決まりが守れない」とみなされるでしょう。つまり、長文を書くことも大学生のうちに身につけたい大切な一つのスキルなのです。
なお、表紙の文字やタイトル、参考文献リスト、注釈などは文字数に含まれないので気を付けてください。
レポートの参考文献や引用はどのように書けばいいか
はじめに大前提として「レポートの参考文献や引用の書き方は学問分野によって異なります」。驚かれるかもしれませんが、理系と文系でもルールは異なります。また、大学によっても指定される書き方は異なります。
私が専門とする社会学と物理学の参考文献のルールを比較してみてみましょう
卒論の参考文献の書き方を調べる際は、ゼミの教員が所属している学会のルールに従うのがベターです。もしくは授業で指定された書き方に従いましょう。社会学では日本社会学会が書き方を定めており、物理学ではここでは応用物理学会の書き方を参考にしてみます。
わかりやすいように同じ文献で比較してみるとこんな感じです。
応用物理学会
戸田太郎:応用物理 75,221(2006).
日本社会学会
戸田太郎, 2006, 『応用物理』72: 221.
応用物理学会では、著者:誌名, 巻, ページ, (年).の順に書いていますが、日本社会学会では著者, 年, 『誌名』巻: ページ.の順に書かれています。このことから私は「すべての論文で統一された参考文献の表記はないので、面倒かもしれませんが担当教員に聞く」ことを強くおすすめします!
オンライン上で調べて正しい方法を知ることは残念ながら難しいです(あとで書き直しとなると相当面倒です)
ここで解説したような参考文献と引用の書き方は、シカゴスタイル・ハーバード方式といった名前が付いています。以下の記事では、メジャーな方法の一つである「シカゴスタイル」について解説しているので、興味関心がある方は見てみてください。
レポートでやってはいけないことリスト
レポートに正解はありませんか、やってはいけないことは決まっています。あなたは以下のようなミスを
していませんか?どれだけ内容がよくてもレポート作成のマナーを守っていない場合、最悪、単位を落とすことになります。気を付けましょう。
- 提出日を守る
- 定められた文字数以上書く
- 剽窃をしない(文章も図も)(詳しく知りたい方は、下記の記事をチェック!)
- 引用を明記する
- 文頭は一マス空ける
- 倫理的配慮を怠った調査をしない(詳しく知りたい方は、下記の記事をチェック!)
- 孫引きをしない(詳しく知りたい方は、下記の記事をチェック!)
倫理的配慮とは何か?-卒論・論文執筆に気を付けること、例文など簡単にわかりやすく解説-
レポート書く際に参考にしたいおすすめの本
本記事では、レポートの書き方について網羅的に解説してきました。今後、各項目を深掘りする記事を随時増やしていく予定ですが、オンライン上の記事では深掘りに限界があります。
そこでレポートを書く前に読んでおきたい、おすすめの本を紹介します。以下の5冊はどれも手元に置いておいて損はない本です。長期休暇に読んだり、期末前に読んだりしてぜひ参考にしてみてください。
最後に-レポートを積み重ねた先に大学4年時の卒業論文がある-
この記事では、大学におけるレポートの書き方について0から解説してきました。いままでモヤモヤしていたことが、少しでも晴れていたら幸いです。
このサイトでは、レポートの書き方とあわせて卒業論文の書き方についても、たくさんの記事でわかりやすく解説しています。コツコツとレポート書き上げレポート力を鍛えた最後に待っているのが、卒業論文です。学部の早いうちから卒業論文という敵がどんな姿かを知っておくことは重要です。興味関心がある方、逆に卒論について全く知らない方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください!
「卒業論文」と「レポート」の違いとは?5つの違いをわかりやすく解説
卒業論文の書き方をわかりやすく解説-大学院博士課程学生が疑問に答えます-
参考資料
・立教大学図書館, レポートとは.