大学院とは?現役大学院生が徹底解説!-メリットデメリット・学費・何年通うかなど気になる点を解説-

大学院とは

「大学院って何するところなの?」こう聞かれて、すぐに答えられる人は意外と少ないかもしれません。そう、大学院とはあまり実態が知られていない場所なのです。

簡単に説明すると、大学院とは「研究を行う場所・研究者を養成する機関」です。大学院と一口に言っても学部を持つ大学院・独立研究科・大学院大学・専門職大学院など実は様々な種類がありますが、ここでは「研究する機関」と認識しておけば問題ありません。

学部を持つ大学院には「修士」と「博士」の二つの課程があります。本記事では、大学院の博士課程に所属する筆者が「大学院とは何か」という問いに網羅的にできる限りわかりやすく答えていきます。

この記事だけでは不十分な部分については、随時、記事を増やして解説していくので、ぜひ記事中で紹介している他の記事もあわせて読んでみてください。

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大学院とは

大学院とは、学士過程で優秀な成績評価を取得しさらに研究したいという思いをもつ人や、社会人として働く中でさらに自身の専門性を高めたいという思いを持つ人がすすむ学術機関です。

大学院で行うことは、ずばり「研究」です。自身が興味関心をもつ分野の知識を身につけながら研究を行い、その成果を論文などの形で社会や学術分野への発表します。

筆者の考えとしては「なんとなく大学院進学しようかな~」というテンションで大学院進学することは、今の時代ではやめておいた方がいいと思います。

明確な意思をもって「研究が楽しい」「もっと研究がしたい」「この分野で専門性を高めたい」と思った人は、ぜひとも進んでみてはいかがでしょうか。

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大学院 修士課程と博士課程の違い

大学院は、主に「修士課程」「博士課程」の二つの段階に分かれています。

日本の大学院の修士課程は2年間の場合が多く、研究者になるための基本的な知識を身につけることを目指します。修了のためには単位の取得と修士論文の提出が必要です。

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博士課程は3年間の場合が多く、研究者として自立して研究を行い、専門とする分野のスペシャリストになることを目指します。修了のためには単位の取得、論文投稿、博士論文の提出が必要です。

なお大学院で決められた単位を取得はしたものの、標準修業年限内(8年以内など)に博士論文を提出せずに退学した場合、「満期退学」あるいは「単位取得退学」と呼びます。

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大学院にはいくつかの種類がある

一口に大学院といっても、いくつかの種類に分かれています。ここでは主な大学院の種類をご紹介します。

多くの皆さんが大学院と聞いて思い浮かべるのが「学部を持つ大学院」です。4年制大学にあり基礎となる学部組織とあわせて設置されています。対して、学部を持つ大学院とは異なり、学部組織をもたないのが独立研究科と呼ばれる大学院です。ビジネスや環境課題解決など実践的なものが多い印象です。

他には、学部のある大学をもたない大学院大学という機関もあります。別名、独立大学院と呼ばれることもあります。政策研究大学院大学などがこれにあたります。

研究を主たる目的とせず、高度な専門的能力を身につける専門職大学院というものもあります。法科大学院や教職大学院とよばれるものがこれにあたります。

大学院の進学率

大学院の進学率は、修士課程と博士課程で微妙に異なる傾向にあります。

科学技術・学術政策研究所のレポートによれば、大学院修士課程入学者数は、2018年度時点で7.4万人です。2010年をピークに減少傾向にありましたが、2015年度から再び増加傾向にあります。

しかし、大学院修士課程修了者の進学率は近年、減少傾向にあります。2018年度の割合は9.3%でした。分野別でみていくと「理学」「人文科学」「社会科学」の減少が著しい状況にあり、「文系大学院は使えない」という一部で聞くような言説を反映したような状態となっています。

大学院博士課程の入学者数は、2003年度をピークに減少傾向にあります。2018年度の入学者数は1.5万人でした。2017年度と比較すると0.9%増加していますが、これは工学系の数が多いことに起因しています。

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社会人の大学院進学

こうした状況の中で、注目を集めているのが社会人の大学院進学です。背景には「大人の学び直しブーム」や、社会状況の目まぐるしい変化についていくための勉強の必要性の高まり、転職市場で有利に転職を進めるためなどの理由があります。

社会人博士課程入学者数は、近年、増加傾向にあります。2018年度の調査では全体に占める割合は42.7%となっており、2003年度と比較するとおよそ2倍にもなっています。

大学院は何年通う?年数は?

基本的には修士課程が2年、博士課程が3年で計5年となっている場合が多いです。しかしこれは、あくまで順調に行った場合の年数であるため、例えば社会科学系の理論系研究や、人文学系の研究では、5年~8年修了までかかることもざらにあります。

昔は、特に文系では博士課程を3年で修了するということはほぼあり得ませんでした。修了するとしても、博士課程単位取得満期退学で、博士論文は提出しないというケースが多くありました。

しかし近年は、研究者が増加する一方でポストが減少しているため就職市場において競争がし烈となっており、できる限り早く博士号を取得し就職先を探すという流れが大きくなりつつあります。

そのため、教授も長く大学院にいることを強制するようなことは無くなり、できる限り早く修了できるような研究計画を組むことを促す人も増えています。しかしその結果として、修士論文や博士論文の質が下がっているという指摘もあるため、大学院のあり方と研究者の就職をめぐって「今のままで本当にいいの?」という議論も出てきています。

大学院のメリット

大学院進学にはメリットもデメリットもあると思います。そこで以下では、メリットデメリットをリスト形式で紹介していきます。詳細については、別記事で解説するのでそちらもあわせてご覧ください。

  • 高い専門性が身につく
  • 研究者への道が開ける
  • 就職の選択肢が増える(よりレベルの高い企業に採用してもらえる可能性が高まる)
  • 就職時、初任給が高くなる傾向にある
  • 論理的思考力が伸びる
  • ある研究分野内でネットワークができる
  • 本当に頭の良い人たちをまじかでみることができる
  • 学会で発表できる

大学院のデメリット

つづいて大学院進学のデメリット(厳しさ・難しさ)についてもリストアップしていきます。ここではあえてデメリットを列挙していますが、大学院に進学する人はこれらのことは織り込み済みで「それでも大学院に行きたい!」という強い意志を持つことが重要です。

  • 学費など費用が学部+αでかかる
  • 就職が遅れる
  • 研究者の道は近年、どんどん厳しくなっている
  • 研究に追われる日々になる
  • 友達付き合いや交友関係は狭くなる
  • 趣味や娯楽の時間が減る

大学院の学費事情

大学院進学ガイドのレポートによると、大学院の初年度にかかかる費用は、国立で82万円程度、公立大で70~100万円程度、私立(文系)で80~180万円程度私立(理系)で100~180万円程度、私立専門職大学院(法科大学院除く)で70~260万円程度、法科大学院(私立)で90万円~200万円程度、通信制大学院で60~100万円程度といわれています。

大学院の学費は、特に国立大学で年々高くなる傾向にあります。一方で私立大学では、大学院生確保のために学費を下げたり、大学院生向けの奨学金を充実させるところも増えてきています。

つまり、国立の大学院は学費が上がり、私立の大学院は奨学金の充実などによって学費が下がり、結果的に国立と私立の学費の差があまり大きくない状態になってきています。

大学院進学ガイドのレポートは、あくまで奨学金などを使わない状態です。大学院進学時には入学金や授業料以外の情報もしっかりと確認するようにしましょう。

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大学院入試とは

大学院に入るためには入試を受ける必要があります。大学院入試は、秋と春の2回行われるところが多いです。

修士課程の大学院入試の場合はさまざまなケースがあります。例えば筆者が受けたことのある大学院では、英語・専門分野の知識を問う問題が一次試験、二次試験で面接というケースがありました。

他には春に受けた入試では、一次試験が研究計画書・卒業論文、二次試験が英語と面接ということもありました。近年では、英語の試験は民間試験(IELTSやTOEFL)で代用可能という大学院も増えてきています。

博士課程の入試は、修士課程ほど専門的な知識などは問われません。英語・面接・修士論文・研究計画書、この4つの組み合わせで入試が行われるケースが多いように感じます。

なお言語については、学びたい言語が海外の英語以外のものである場合には、その言語の試験を受けることになります。逆に留学で日本の大学院の入試を受ける場合には、日本語の試験を受けることになるケースが多いです。

気を付けなければいけないのは、ここで挙げたのはあくまで一例であるということ。大学院によって入試の形態は全く異なるので、必ず志望する大学院の入試概要をしっかりと読み込むようにしましょう。

研究計画書とは?現役大学院生が目的・書き方・コツをわかりやすく解説

大学院進学前には、研究室訪問が必要な場合が多い

大学院入試を受ける前に必要なのが「研究室訪問」です。研究室訪問とは受験前に将来、教えてもらいたい教授と会って研究計画や大学生活について話す機会です。

特に理系の場合は研究室訪問がほぼ必須で、文系の場合も最近は研究室訪問が必要なケースが増えてきています

研究室訪問については、以下の記事で詳しく解説しているので興味関心ある方・これから研究室訪問する方は読んでみてください。

博士大学院生直伝 研究室訪問のメール書き方を徹底解説!

博士課程大学院生直伝!研究室訪問で聞くべき質問10選-具体例ありでわかりやすく解説-

研究室訪問で聞かれること5選-博士大学院生が解説・対策方法の紹介もあり-

博士大学院生直伝!研究室訪問後のお礼のメールの書き方-例文あり!-

最後に-大学院卒業のためには論文執筆が不可欠-

本記事では、現役の博士課程所属の大学院生が「大学院」について網羅的に解説してきました。

大学院修了のために、多くの場合必要なのが論文実績です。ジャーナルや専門誌への投稿論文と、修了のための修士論文・博士論文の提出が学位取得のために必要になります。

本サイトでは、大学院での論文執筆に役立つ記事も多数掲載しています。これから研究計画書を書く方・大学院での論文執筆などに興味ある方は、ぜひあわせて読んでみてください。

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最後に効率よく学ぶために本を電子版で読むのもオススメです。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

管理人

某国立大学大学院博士後期課程所属. 社会科学分野での地域研究が専門. 卒業論文では地域とメディアについて取り上げ、修士論文では地方自治体で暮らす人々の人間関係を取りあげました。大学院で研究して論文を書いたり、各種媒体に寄稿したりしています。