修論執筆時につまづく人が多いのが文字数です。例えば以下のような悩みが修論の文字数に関してはよく聞かれるものです。皆さんはどれに当てはまりますか?
- 文字数の目安がわからない
- 文字数にどこが含まれるのかわからない
- 英語で書く場合の文字数がわからない
- 文字数が規定に満たない
- 文字数が多すぎる気がする
巷では修論の文字数を稼ぐテクニックが散見されます。しかし文字数を増やしても論文の質が低ければ意味がありません。卒論とは異なり、修論の場合は受理されないケースもあるでしょう。
そこで本記事では現役の博士課程大学院生がより文字数をめぐるさまざまな疑問について解説していきます。
なお修論の文字数については、大学ごとに規定が異なります。最終的には大学に確認することをおすすめします。
本記事を読む前に
修論の文字数で大切なのは量ではなく中身の質です。小手先で文字数をいたずらに増やした修論は読めばすぐバレるのが現実。評価は低いものになりひどい場合には受理されないこともあるでしょう。
「○○文字以上書くのつらい」ではなく、「興味関心あること・必要情報を書いていったらいつの間にか指定された文字数を超えていた!」というのがベストです。書きたいことをまずはどんどん書いていって、後で削って洗練していく気持ちで書き進めましょう。
修論の文字数は何文字程度が目安か
卒論と比較すると、修論の文字数はとても多く感じるかもしれません。修論の文字数について何文字以上書かないとダメという一般的なルールはありませんが、最低40,000文字以上は書くのが望ましいと思います。
ちなみに私の修士論文は、表紙や参考文献、注など全てを含めた文字数が130,000文字でした。本文のみだと125,000文字でした。インタビュー調査データを含むので多くなっていますが、私のゼミではこの文字数は平均的なものでした。
大学によって異なる修論の文字数規定
大学によって修論の文字数規定は異なります。以下にいくつかの大学の規定を引用して示しておきました。これだけみても大学によって規定が異なることがわかるかと思います。
大学名 | 修論の文字数規定 |
上智大学 | 論文の長さは、原則として400字詰め原稿用紙150枚相当以上とする。A4判1枚に大体原稿用紙3枚分の量が盛り込めるるので、修士論文の最低ラインは、大体50枚以上ということになる。 |
法政大学経営学専攻 | 400字詰め原稿用紙50枚以上 |
一橋大学社会学研究科 | 40字×30行のWordページ85ページ以上 |
修論の文字数の目安は文系と理系で異なる傾向にある
文系の修論文字数と理系の修論文字数では、一般的に文系のほうが多い傾向にあります。
理由は理系は実験や検証の過程を自身が行ったものを直線的に検証し書いていく傾向があるのに対し、文系の場合は自身が設定した仮説や先行事例を多角的に検証していく必要があるからです。また多くの場合は考えを言葉で書いていくので、言葉が誤解なく伝わるように随時説明を加えていくことになります。
これはあくまで傾向であるため指定される文字数は大学ごとに異なります。またひとくくりに理系・文系といっても分野によって書き方の作法は異なるので、一概に文系は何文字以上、理系は何文字以上書けばいいというものはありません。
ただ文系で修論を書こうとしているのに理系の先輩の修論を読んで「個くらいの文字数でいいのか!」みたいな判断はしないようにしましょう。
修論の文字数をページ数で換算した場合の目安
A4サイズの用紙の場合、1行に40字×36行=1,440文字でだいたい1ページ埋まるので全く図表が無かったとするとA4で27枚ほどとなります。これが最低ページ数と考えると50P程度は書くのが望ましいでしょう。
さらに表紙、目次、図表・参考文献・参考資料などが加わるので60Pを超えることも普通にあります。
修論の文字数 英語で書く場合はどう数える?
修論を英語で書く場合の文字数換算は日本語とは異なります。
まず英語の主論では文字数を指定される場合と単度数を指定される場合があります。文字数を指定される場合は300,000文字~350,000文字程度、単語数の場合は12,000単語程度が一般的です。
外国語学部英文科専攻と英文科以外では指定される文字数も異なるので、大学の規定をはじめに確認しましょう。
卒論 文字数が足りない場合の対処法 そのまま提出はあり?
はじめに修論は文字数よりも質が重要と書きましたが、規定の文字数に達していなければその時点で受理されず落第です。
とはいえ、書きたいことを一通り書いても指定された文字数に達しないことはあります。そこで以下では「文字数を増やしつつ卒論の質も高めていく」ような方法をいくつか紹介します。
研究の背景に厚みをもたせる
研究の背景は研究テーマの背景と現状、研究仮説や研究を通して明らかにしたいこと、研究の動機や問題意識、自身のこれまでの研究とこれから行う研究のつながりなどを各部分です。
ここに挙げたようなことが入っていない場合、もしくは簡潔で言葉足らずな場合は読んだ人にわかりやすくなるように追記しましょう。
特に筆者の課題意識「なぜこの研究を行うのか?」と思いの部分を文系の場合は充実させることで、あなたにしかできない/あなたがやることに意味がある修論にすることができます。
研究結果とまとめを充実させる
研究結果とまとめは修論で最も大切な部分の1つです。簡潔に示すことがベストですが、ここであなたが伝えたいことをすべて書ききる必要があります。図や表も効果的に活用しながらあなたが伝えたいことを書いていきましょう。
残された課題を充実させる
最も文字数を増やしやすいのは物された課題の部分です。なぜならここの内容は中身と直接関係していないくても、修論から派生してあなたが解決すべきと思う課題をいくつでも書けるからです。この世の中に完璧な修論はないので、修論を読み返すといくつも穴を見つけられるでしょう。
また先生や友達に読んでもらうと不足している部分や課題が浮かび上がってくるはずです。それらをすべて残された課題に組み込むことで卒論に将来性をもたせることができる同時に、質も高い卒論となるでしょう。
文字数が足りないまま提出するのはNGです。内容が優れていれば文字数が足りなくても通ることはありますが、ルールを守ったうえではじめて審査対象となるものなので文字数の指定がある場合はしっかり守りましょう。
修論の文字数に含まれないのはどこ?参考文献・目次は?
注意点として、修論の文字数を通常カウントする際には参考文献・タイトル・氏名・学籍番号・学科・目次・謝辞、引用先リンクなどは文字数に加算されません。
逆にいうと参考文献や補足資料の量に制限もあまりないので、必要な場合は文字数や枚数を気にせずにしっかりと補足を加えましょう。
参考文献の書き方を知りたいかたはこちらの記事をご覧ください。
最後に-既定の文字数に届かない人は思考不足の可能性が多い-
そもそも修論にはなぜ文字数の指定があるのでしょうか?
第一の理由は40,000文字程度の文章が論理的に変える能力が2年間の修了時には求められるということ。第二の理由は研究成果を論理的に記述していくと40,000文字は簡単に超えてしまうからです。
逆にいえば特に文系で真面目に卒論を書いていって40,000文字に満たない場合は、まだそれは思考不足・研究不足といえるでしょう。文字数を意識しつつ質の高い修論の執筆を目指して頑張ってください!